施設視察報告書 2019.12.23~12.30
ウィーンの水道水ライフスタイル
★ 視察の動機
思えば、1983年(昭和58年)の日本コカ・コーラ社が1.5Lのペットボトル入り飲料水を発売開始して以来、1996年(平成8年)の自主規制の緩和(500mL以下の小型サイズの販売解禁)や、コンビニエンスストアや自動販売機における販売等により、ペットボトル入り飲料水は、非常に身近で便利な飲み物となりました。
しかし、昨今の飲料用ペットボトルの廃棄物に係る社会問題において、地球環境保護の観点から近未来には水道水を昔のように蛇口から飲み、外出時にはマイボトルで水道水を持ち歩くようなライフスタイルが主流になると考えられます。
「水道水の安全・安心」への意識改革と実現に向け、現在、「飲料用ペットボトルの自動販売機が電車の駅構内を除くと皆無ではないでしょうか?」と聞いていたオーストリアの首都『ウィーン』へ・・・。蛇口までの水道水の安全・安心を担保し、周知させる政策と、ペットボトル等のワンウェイ ボトルの削減、二酸化炭素やゴミ、リサイクルに係る社会的コストの削減等にも寄与しているライフスタイルの現状を視察して参りました。
★オーストリアの水道水
ウィーン水道のHPによると、ウィーンの水道水源は、アルプス山脈からの湧水で、アルプスから2本のパイプラインにてウィーンの貯水池まで導水されています。
市南方からの№Ⅰパイプラインは、水源から総延長150㎞、毎日22万m3の冷たいアルプスの湧水が、24時間以内に直接ウィーンのローゼンヒューゲル貯水池に流れ込んでいます。
もう一方の西方からの№Ⅱパイプラインは、水源から総延長180kmあり、毎日21万7千m3の冷たいアルプスの湧水が、36時間を要し360mの高低差を利用して№Ⅰと同様、直接ウィーンの貯水池まで供給されています。
ウィーン市内では、ペットボトル入り飲料水を飲んでいる人は、一人も見かけませんでした。
ガイド役をお願いした、今年2月末から1年間、ウィーン大学での留学生活を満喫中の姪が言うには、
「大学の皆も、マイボトルを持って来てるょ。私も。」「中の飲料が無くなったら、学内の蛇口から飲むょ。だって、ウィーンの水道水は、美味しく飲めるも~~ん。」
ウィーンから電車で3時間30分程の岩塩で栄えた小さな町「ハルシュタット」へ出かけ、市内で歴史が感じられる湧水の給水口を発見しました。(右写真)
この泉は、背後にあるダッハシュタイン石灰岩の割れ目から生じていますが、ミネラル成分はほとんど含まれていないそうです。(ここは昔、ザルツベルクから塩石を運んだ際の、休憩場所だったそうです。)
★ 飲料水スタンドの現状
ウィーン市内では毎年4月から10月末まで、写真左の『飲料水スタンド』が設置されるのですが、当然ながら今回はシーズンオフのため、見ることができませんでした。(左の写真は、ウィーン水道HPより借用。)
歩道上の消火栓に上からスポッと被せているそうで、夏には、マイボトルを持った人がたくさん並ぶそうです。また、給水口の他、「ミスト」も噴き出す構造になっているそうです。
ここで注目は飲料水スタンドの文字(ドイツ語)
「Trink Wasser!」 ・・・・・水を飲もう!
このような『飲料水スタンド』は、写真右の歩道上の消火栓に給水口と開閉ハンドルを装着した『消火栓』を含めて、市内に1,000箇所ほどあるそうです。
オーストリアではないのですが、出発時、羽田空港出発ゲート前のお手洗い入口の横のマイボトル用「給水・給湯栓」(写真左)に、外国人が十数人並んでいました。てっきりお手洗い渋滞かと思ったら、「給水渋滞」でした。(日本人は何故か一人もいませんでした。日本ではマイボトルを持つ人がまだまだ少ないようです。)
でも、ようやく日本もペットボトルの環境問題等を考慮し、『水道水を飲むライフスタイル』に向けて第一歩を少しづつでも進むべきでは・・・・・と思い、2019函館水道展にて当社ブースにお立ち寄りいただいた方々に、写真右のSUS製マイボトル(350mL)をご自宅へのお土産としていただきました。
★ オーストリア各地の消火栓
決して「消火栓オタク」ではない私ですが、職業病でしょうか・・・。